老人ホームの皆様と恐竜を作って、保育園にプレゼントに行く。
ただものを作るだけでなく、誰かが自分の作品を必要としているなかで、作品を作れることはとても幸せなことだと僕は思う。
「今日は3才の子ども達へのプレゼント作りを手伝ってください。
子ども達はみなさんの作る恐竜をとても楽しみに待っています。
今ごろちょうどお昼寝をしています。よろしくお願い致します。」
恐竜作りは想像以上に難しく、こんな作品では喜んでくれないのではないかというプレッシャーが参加者のひとりひとりに感じられ、その全員の不安は僕の背中に重くのしかかり押しつぶされそうになったけれど、僕は全神経を集中してそれを隠した。
その不安の向こうを僕と見よう。
お昼寝から起きるとプレゼントが届く。クリスマスの朝みたいに。
これまでのワークショップでは僕が自分の作品の一部を参加者に任せ、参加者の力を本気で必要とする趣旨だったけど、今回はその必要とする役割も3才の子ども達に任せてしまった。
彼らなら僕の代わりどころか僕以上の「ありがとう」を本気で言うことが出来る。
お昼寝が終わると待ちに待った恐竜のプレゼントを抱えてまるでサンタクロースのようにおばあちゃんたちがやってくる。
しかもサンタクロースと違ってちゃんと出会って友達になることが出来る。
子ども達は尊敬のまなざしでいつまでも大切そうに恐竜を抱え、おばあちゃん達は子ども達によく似たまなざしでいつまでも大切そうに子ども達を見つめた。
今度は子ども達がお礼に老人ホームへ歌を歌いに行こうということになった。
感謝の気持ちが僕ではなく参加者に向いている。
新しく生まれた宇宙の完成を見届けて僕は空気のように姿を消した。
この度は無理なお願いを聞いて頂き、保育園を探したり準備を整えてくださったアーツアライブに本当に感謝します。
おいしい料理が出来たとします。
そしてそれが体にとても良いことが分かったとします。
するとそれは体に良い料理として作られるようになります。
そのとたんに料理はまずくなります。
目的が「おいしい料理を作る」から「体に良い料理を作る」に変わったからです。
僕の目的を変えないまま別の目的の中に僕を存在させることは決して僕一人では出来ないことです。
そしてその間に入ることは大変勇気のいることだし難しいことだとも思います。
いつもいつもそれに果敢に挑戦して頂き本当にありがとうございます。
また気持ちよくご協力してくださった施設や保育園の皆様ありがとうございました。
おかげで僕は僕の役割に全力を注ぐことが出来ました。
あれは素晴らしい出来事でした。
これからもぜひおばあちゃん達と子ども達を会わせてあげてください。
主催 アーツアライブ http://www.artsalivejp.org/
協力 特別養護老人ホーム桐ヶ丘やまぶき荘
桐ヶ丘保育園