アーツアライブ主催 ヤマト福祉財団助成事業 北区若葉福祉園ワークショップ
画像は145.0cm×400.0cmの作品(制作途中)
はじまりは昨年の今頃のことだった。
「壁画プロジェクトを障がい者の方を対象に実施したらどうかと思いました。
ご興味あるかどうか、また ご意見をお聞かせください。」
とアーツアライブ代表の林容子さんからメールが来た。
意見どころか障がい者について僕は全く知識がなく、興味があるのかどうかすらも分からないので
「それは良い考えだと思います。」
と返事をした。
そして今年の8月、
「秋に実施しましょう。」
と突然のメールがあった。
少し焦ったけど起きるべきことは起きるべき時に起きるのだろう。
「楽しみにしております。」
と僕は返事をした。
北区若葉福祉園(重度知的障害者通所施設)でのワークショップ
ニューヨークやパリなど海外へ滞在したときのような衝撃があった。
それ以上かも知れない。
まるで別の宇宙に来たようだ。
英会話以上に僕の言葉は通じなかった。
大声で叫んだり、床に頭を打ち付けたりする人もいる。
こういう話だけ聞くと障がいを持って生まれてかわいそうと思うかもしれない。
でも僕だってそうしないだけのことで、頭を打ち付けたくなったり大声で叫びたくなったりすることはある。
自分の気持ちに正直な分、彼らの方が我慢している僕よりキラキラとしているかもしれない。
苦しんだり辛そうにしている人はおらず、彼らにはそれが当たり前の状態で普通なのだと思った。
海外であろうと宇宙であろうと僕は画家としてベストな状態で存在するだけだ。
画面を塗りつぶしたような絵が多かったけど、塗りつぶすことしか出来ないから悲しいのではない。
塗りつぶすことが出来て心から嬉しいらしい。
そこまで純度の高い色塗りを僕は出来ない。
彼らは描きたい絵しか描かないし、塗りたい色しか塗らない。
究極に僕の目指す絵画のデテールが次々に集まった。
「素晴らしい作品をありがとう。大事に使わせてもらいます。」
と僕は作品を大画面に貼っていく。
気がつくとワークショップは終わり、やったーやったーと大きな声で彼らは何かをやり遂げ拍手をしながら退室していった。
作品は素晴らしく順調にうまくいっている。
良い予感を持ちながら2週間後につなげた。
彼らに僕たちのように生きることは無理だし、僕たちが彼らのように生きることも無理だろうと思う。
そこから目を背けてはならない。
でもそれ自体が不幸だというわけではない。
一緒に生きるのが本当に難しいだけだ。
但し、一緒に生きるのが難しいといっても、
嫌いな人に対して二度とこの人とはつきあいたくないと感じるのとは違って、
難しい登山に挑むような種類のやりがいのある困難だ。
本当に難しいけど僕たちは一緒に生きたいという心をお互いに持っている。
それは間違いない。
あまりに難しくて心が折れそうになる時もあるに違いない。
世界中を旅して回ったという人より僕はここで働く職員を尊敬する。
なんといってもここは宇宙なのだ。
海外とはレベルが違う。
ここの職員が日々直面している冒険に比べたら、僕の海外経験なんてかっこつけた散歩程度にすぎない。