流れるプールの底を潜水して泳いでいると本当に魚になったみたいに感じる。
人々の足下をするりとすり抜けながら夏の太陽の光の中で流れに身を任せる。
後ろから小学2年生になった咲哉がついてくる。
僕たちは毎週末のようにプールに通っている。
咲哉は水泳に凄く自信を持っている。
スイミングスクールのテストでタイムが切れずに進級テストで不合格しても、自分より早い誰かに負けても、
「もっと速く泳げる気がする」
と常に自信に目を輝かせている。
ストップウォッチがはっきりとタイムを示しているのに。
もう一回測れば "次はもっと早く泳げるに違いない" と、
たった今全力を出し切ったばかりで本気でそう思っている。
まだまだいくらでもスピードをあげられる気がするらしい。
こうなると記録や結果はほとんど何も意味を持たない。
いったいどうしてそんなに自信があるのか分からないと妻が不思議そうにしている。
実は信じられないことに僕はその数倍の自信を持って絵を描いている。