池平徹兵展 「全ては美しく」
2016 9月11日(日)~9月17日(土)
12:00ー18:00(最終日16:30まで)*11日12:00-17:00
ギャラリーゴトウ
〒104-0061東京都中央区銀座1-7-5銀座中央通りビル7F
03-6410-8881
ggoto@juno.ocn.ne.jp
会場の音楽 gO
今回は作品に文章を添えて、空の物語を歩く展示になっています。
下記展示中の文章の一つ
鶴は機織りに絶対の自信を持っていた。
ある日、おじいさんとおばあさんに隠れて自分の羽をこっそり抜いた。
それを織り交ぜることで他の鶴にはまね出来ない個性を手に入れた。
こうして鶴は芸術家となった。
自分の羽を抜くまでに実は相当な苦労があった。
自分の身を犠牲にする覚悟。それは並大抵の覚悟では無かった。
だけどそれほどに鶴は機織りに全てをかけていた。
自分の身を削ることに美学を見付けた鶴はいつからか一つの作品の為に、
丸裸になるまで羽を抜くようになっていた。
身を削ってこそ良い作品は生まれると信じていた。
しだいにそれはほとんど生けにえの域に達するようになる。
心臓の重みを限りなく現実に近い比喩上で作品にのせた。
鶴は一つ作品を生むたびに、一つ残らず羽をむしり、寒い冬には死の淵をさまよった。
おじいさんとおばあさんはそんな鶴をとても心配した。
何かが間違っている。
鶴は羽を抜かなくなった。
その代わりに作品も出来なくなった。
作品が出来ない苦しみに比べたら、羽を抜いた方がまだましに思えた。
しかしそれではこれまでの繰り返しだ。と鶴は思う。
真新しい羽が生え揃ったある日、鶴はアトリエのカーテンを開けた。
広がる大きな空。
この羽はそこを飛ぶ為にあるのだ。と鶴は分かった。
鶴は空を羽ばたいた。
久しぶりの上空。素晴らしい景色だった。
鶴はその感動を織り込んで新作を描いた。