VOCA展へ大作を送り出した翌日、新しい大きなキャンバスがアトリエに届いた。
アートフェア東京2017で発表する作品を描く為だ。
2月末までに完成させるとなると、一枚にかかる制作時間、3ヶ月を切っている。
お正月に島根へ行くことを考えるともう時間がなかった。
あの大作「居場所を知ったものたち」が上野の森美術館で展示される頃までに、僕はそれを超えたかった。
僕はまだまだ未熟な人間だから
あれが評価されたらその評価にしがみつきたくなるかもしれない。
そんなみっともないことにはなりたくない。
たった1日で昨日までの自分が今日の敵に変わる。
その日のうちに下塗りを済ませ、次の日の朝にヤスリをかけて描く準備は整った。
でもさすがに充電が溜まってないような気がして久しぶりに一人でプールへ行った。
描こうとしてはならない。描かずにはいられなくなる状態を作るだけだ。
プールは思った以上におばちゃん達で溢れていて、ウォーキングをするおばちゃん達の水流が激しい渦を巻いていた。
僕はその水流の中を何度も往復しながら、やっぱり早く帰って絵が描きたくなってきた。
才能は限りある資源なんかではない。
収穫しなければ腐らせてしまう種類のものだ。
こうして僕はすぐに新しい大作の制作に取り掛かった。
あれから2ヶ月がたった今、間違いなく今がベストだ。
喜びと同時に、なぜもっと早くここにたどり着けなかったのかという悔しさ。
あの時もっとやれたのではないか。
あの時にはできなかった今にたどり着いた。
次はもっとやれるだろう。
感情が次々に入れ替わる。
未来の方を見て生きていこう。
新作「朝の理想郷」datail