黄砂を抜けて、さらに上空の雲を越え、雲の届かない高さまで行くと、世界は晴れた。
曇っても、雨が降っても、その上には晴れた世界がある。
上空から見る海はいつも止まって見える。船も波も貼付けられた模型の海のよう。
どう見ても何かの理由でこちら側とは別のスピードで時間が流れている。
それがばれないように機長は携帯の電源を切らせる。
だけど僕はその秘密を知っている。
当たり前を当たり前として信じすぎるのは良くない。機長すら電源を切らせる本当の意味には気づいてない。
電波が機械に影響するからと教えられたことを守っている。乗客も墜落したくないから電源を切る。
秘密は完璧に守られる。
地動説が世界を驚かせたようなことはこれからもいつだって起こりうる。
夜空に広がる宇宙がどこまで続いているのかを知る鍵がそこにはきっとある。
そんなことを考えながら東京に到着。
地上に降りると、いつも通りの時間が動き出した。何事もなかったかのように。