森の地底

GWが終わりまたそれぞれがそれぞれの方向へ向かって進み始める。

いつかと同じ場所に立ったときに感じる、前にここにいた自分と、今ここにいる自分の感覚的な違い。
時間の経過によって生まれるものではなく、急激な成長によってのみ生まれる現象。
目に見えない種類の成果の手応えを実感する方法。
これを僕はずっと待ちわびていた。

5月4日5日 奥多摩

地底に滴る透明な水音を幾年も体にしみ込ませた根のかけら。
地上に出てもそのリズムと音色は色あせずに地下に潜む巨大な木の根を何度でも想像させる。
壮大なスケールの中でのほんの一部分、誰も目にとめないようなわずかな一部分は、
アトリエで圧倒的な存在感を放ち、今にもここを大自然の一部に飲み込んでしまうのではないかと思わせるほどの空気を部屋に充満させる。実際そうなんだろうとも思う。
100年かけて1cmのつららを伸ばす時間の座標の中で、人の一生はあまりに小さく儚い。
その一瞬の瞬きが千年の時を超える力を持つ時、
何億光年も離れた星の瞬きのように、この木の根のように、巨大な宇宙のかけらとなり、永遠のときを刻み始める。

5月6日 新宿 7日 渋谷

激しい人の流れと雑音の中、僕は待ちわびた感覚を噛み締める。
大きくまとめると島根の個展から蓄えてきたエネルギーがやっと体に馴染んで前へ向かって動き始めた。


5月20日21日 デザインフェスタに出展します。
ブースNo C+-938