山について

登る山が高ければ高いほど登ったとき気持ちがいいんだと人は言う。
僕の場合その山自体が自分の作品じゃなきゃダメなんだと僕は言う。

満員電車の中、みんなそれぞれの山を登ってるんだろうなと思う。
僕の山は誰も与えてはくれないので僕はまだ山を作っている。
どの山にも属さない孤独感を感じる。
山を作るのはとても難しい。

後一息で山が完成しそうな気がする。
これまでに何度も焦って登って途中で崩れたから、
今度はとびっきり高くてしっかりした立派なのを作ろうと思う。

そしたらやっと僕も登り始める。
完成間近になって気が付いた。
僕は全く山登りが好きじゃない。

頂上に最後の小石を置いた時、すでに登っているのかもしれないなと思う。
わざわざ下って登り直す必要は無い。
僕はたぶん一生山を作り続ける。