春のような冬の一日。

スマイルプロジェクトと題して笑顔を作る。
わざわざプロジェクトにしなくても当たり前に笑顔を見せなさい。
ポテトを食べて画材を買いに出掛ける。

重要文化財の梅田家の門が開いている。
滅多に開いてる事は無いので車で中へ入る。
洋館の横に止めて天井の高さや池の鯉を観察していると怪しまれたので、
「画家の池平徹兵です。」と名乗る。
「お見それ致しました。」と言われる。
お見それ致しましたの意味が分からないまま中へ通される。

中では4年前の僕と梅田さんが待っていた。
「君は今に大変な画家になる。」
梅田さんが言う。
お会いするのは4年前の個展以来なので梅田さんの言う今に大変な画家になりそうな僕は4年前の僕という事になる。
4年前の僕をうまく思い出せない。
だけどそう思わせた事はとても立派な事なので4年前の僕を連れて帰ることにした。


3階建てのビルのアトリエに戻る。
いよいよ最高傑作が生まれる。
カラスがベランダの窓をかすめて過ぎる。
続いて猫がカラスめがけて飛び降りる。
4年前の僕も迷い無く後に続く。

「アーティストは題するまでもなく当たり前に毎日がプロジェクトであり、当たり前に人生がプロジェクト作品でなければならない。」
と僕は言う。
猫は病院に運ばれながら僕に微笑む。

今日の冬は春のように暖かい。
春を待たずに今日を楽しむ。