ミノムシとうたた寝

夜中の寝室で毛布にくるまって僕は布団の上に座っている。
あらゆる関節が痛くて横になる事が出来ない。
沢山服を着て毛布も布団も着て、虚弱用ドリンクを飲んで、それでも寒さに心臓が震える。

大作を一つ完成させれば必ずこういう日がやってくる。
いつも流行に合わせた形で今回は喉と熱の風邪。
これなら最後の地上を描いた時のように気を失ってしまえたらまだましなのに。

体を壊すと連日吹き荒れる砂嵐がピタっと止まるように僕は画家ではなくなる。

何も悪い事はしてないはずなのに大作を描くと何かの罰が当たるように必ず苦しい日がやってくる。

そういえばミノムシのみのを壊した。

「あれを壊したのは音楽家の方ですよ。」

僕は真夜中の布団の上に座って、時計の音と街灯の明かりの中とうたた寝の世界を行き来する。

朝が来て、ミノムシを飼っている白い箱の前までふらふらと歩く。
ミノムシは動かない。完全に死んでいる。
心臓マッサージを繰り返すうちに、ミノムシがうっとうしそうに目を開ける。
「死んでないから辞めてくれないか。それに君の風邪は僕のせいじゃない。」

僕は少し安心して再び布団の中に帰る。
プラネットアース冬虫夏草の映像を繰り返し見る。
一匹のアリが菌に感染して苦しみ始める。
やがてアリの頭を割って植物が生える。
僕も頭蓋骨を割って植物が生えてきそうな気持ちになる。
それはそれで良い。

僕は現在、天才画家でもなんでもなくただの病人です。
アトリエ公開を楽しみにしてくれてた皆様ごめんなさい。