4月

4月がはじまる。

隣の部屋に人が引っ越して来た。
とてもうるさいので亜矢子が壁を殴ると魔法のように静かになる。

多摩湖で道に迷った夕方、寺院についた。
闇で先の見えないトンネルの奥までお地蔵さんが並ぶ。
怖くて入れない。
後ろには龍の彫刻が階段の下へと長く続いていた。

隣の部屋に人が引っ越して来た。
小鳥を沢山飼っている。
亜矢子が壁をノックすると魔法のように小鳥が歌う。

ゾウの頭が生えた寺院の奥に4体の孔雀のシルエットがこちらにオーラを放つ。
1羽が鳴くと2匹のタヌキがやってきた。
僕の射程距離を正確に見抜きながらゆっくり歩く。

こうして4月がはじまった。

芝生のあちらこちらの透き間からたんぽぽが咲いている。
裸足になると僕は1.5倍のスピードでその上を走る事が出来た。
「4月が来たから強気でいっきに攻めるよ。」
岩田先生が電話の向こうで言う。
「そうですね。」
僕は同意する。