カッシーニ

カッシーニ土星を目指していた。
宇宙は何処までも続くかもしれないし、そうでないかもしれない。

僕は何処を目指しているのかも分からない。
才能はいつまでも続くかもしれないし、そうでないかもしれなかった。

朝が来るたびにたんぽぽが開く。

2004年。7年の歳月をかけてついにカッシーニ土星に到着した。
科学者達が喜びの握手を交わす。
-180℃。炭化水素の湖。南極で直径8000kmの台風が渦を巻く。

7年の歳月をかけて僕はここにいる。
絵を描いていると雨雲が押し寄せ、大雨と雷を降らして過ぎて行った。

カッシーニなら土星にたどり着くだけの年月を僕は画家として過ごした。

家に帰って来た亜矢子がついに完成した僕を見て驚く。
「僕もやっと土星にたどり着いたみたいだ。」
僕達は喜びの握手を交わす。


「僕はこれ以上先に進むようには作られていないんだ。」
カッシーニは僕に言う。
「僕はもっと先に進んでみるよ。」
僕は言う。