太陽の消滅

閉館まぎわの博物館の人の流れを逆流するうちに僕は無料で館内へ入ってしまう。
警備員が後を追って来てはいるけれど、逆に警備員を警備する事でそれはそれほど気にならない。
人のいない薄暗い博物館の空気自体を僕は楽しむ。

いつか太陽が消滅すれば生物の目は退化する。
暗闇の世界がおとずれた時、僕の描いた絵は意味を持つ事が出来るだろうか。

博物館を出て、芸大で木の実を拾っていると、テニスボールと角材が落ちていたのでその場から思い切りホームランを打ってみる。
上野動物園を狙って放たれた打球は、細長く伸びて芸大のキャンパス内に落ちた。

「鹿の角を頂けないでしょうか?」
上野動物園で僕は訪ねる。
「一般の方にはお渡し出来ません。」
その人の言う一般でない方よりも僕は一般でない自信はあるけれど、
僕が一般でない理由を僕はいつもうまく説明出来ない。

いつか太陽が消滅したらもっとそれを説明しづらくなる。
太陽があるうちに早く自分の絵を世界に発表しなければ僕は永遠に鹿の角はもらえない。