2時間講習

本気で教える気のない講師と、本気で教わる気のない生徒達は残念ながら
2時間のあいだ決まり事としてただ教室にいなければならなかった。
それ以外に運転免許証を更新する方法は無い。

それでも僕は画家としてonのスイッチを押し続けなければならない。
たいくつな授業中であればあるほど良いドローイングが描ける。
そう考える事にした。

時間を稼ぐ為の救いようの無い映画がはじまる。
主人公が事故を起こしてどんどん不幸になって行く。
僕はドローイングに集中出来なくなって考え事の時間に切り替える。

人は3000回生まれ変わると聞いた事がある。
それについて考える。
僕が100回目くらいの未熟な存在である事について心配してみる。
それはまだまだ次があるという逃げでしかないなと僕は思う。
これが3000回目の最後の人生であるかもしれない事について心配してみる。
ここで無意味な授業を受けてる場合じゃないと本気で僕はそう思う。

「目の錯覚は誰にでも起こる事です。誰かこれと同じ長さの線を引いて頂きたい。」
講師が僕を指名する。
人生に次が無い僕は前へ出てほぼ正確に同じ長さの線を引く。
「君は何か特殊な訓練を受けているんじゃないの?」
講師は失敗の言い訳を考える。
「実はそうなんです。」
僕はやさしく言い訳作りに手を差し伸べる。