終わりと始まりについての研究

僕は寒さに弱いのと同じくらい暑さにも弱い。
雪の本質を思い出せなくなってきたので夏休みに入る。
その前に描いておきたいものがある。
夏休みの間に描きたいものもある。

睡眠が僕の意識を奪うあいだ以外、僕に休みは無い。
だけど僕はもうすぐ夏休みに入りたい。
その為の絵をこれから描く。

潜る時の大変さとは違って、上がる時は底をトンッと一度蹴るだけで良い。
深海に別れを告げてエレベーターのように上へ登る。
終わりにだけ、始まりがあることを僕は知っている。

描き始めてほんの一時間。
「これは相当良い絵になるね。」
亜矢子が僕に言う。
「嬉しいけど少し言うのが早かったね。」
僕は言う。

これで相当良い絵を描かなければ僕に夏休みはやって来ない。
それを描けば僕は終わり夏が始まる。

僕はいったん全ての自信を失うことに決めた。