「アリとキリギリス」
2017 21.0cm × 29.7cm oil on wood panel
アリとキリギリスってどんなお話?
と息子が僕に聞いた。
僕はとても注意深く話し始めた。
なぜならこの物語は失敗すると芸術家が大ピンチに追い込まれるからだ。
アリさん達は毎日毎日休まず働く。
キリギリスは毎日歌ばかり歌って全く働かない。
「冬に備えないと痛い目にあうよ。」
アリ達は言う。
「僕だって冬に備えたい。でも歌をやめる訳にはいかないんだ。」
キリギリスは言う。
冬が来て、アリ達の予告通り、キリギリスは雪の中で凍えている。
指先の感覚がなくなり、手足がついているのかどうかも分からない。
キリギリスは冷たく冷たく冷えていった。
アリ達は温かな巣の中で蓄えた食料を食べながら何かが足りない事に気がつく。
その何かが分からない事には心までは暖まらない。
アリ達の心は雪の降る冬、冷たく凍え始めた。
キリギリスは力を振り絞り雪の降る音を歌に変えた。
「キリギリスの歌だ!」誰かが言う。
アリ達の心が解凍されていく。
世界にはアリもキリギリスも必要なんだ。
と僕は息子に言う。